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知るほどに、おもしろい。おいしい蓮根のために田島蓮園がある。

愛西市 田島蓮園 田島寛也さん、沙紀さん

愛西市 田島蓮園
田島寛也さん、沙紀さん

Profile 田島寛也さん(写真右)
1994年3月3日、田島家の四代目として生まれる。戌年の魚座。趣味は座禅で特技は殺陣。学生時代は忍者のバイト!?をしていた。子供の頃は、両親が家業で多忙だったため、田んぼの畦で放置されていた。遊び相手は昆虫で、将来の夢は昆虫博士だった。14歳で父親が他界、家業の農家を継ぐことを意識し大学(和歌山大学)では経営学を学んだ。2018年6月6日に(株)田島蓮園を設立、代表取締役になる。
 

Profile 田島沙紀さん(写真左)
静岡生まれ、横浜育ちの都会っ子。東京の大学(慶應義塾大学)では政治学を専攻。学生時代から農業に興味を持ち、農業関係の会社への就活をするなか寛也さんと出会う。卒業後は東京の有機食材などを扱う販社に勤めていたが、2018年7月、寛也さんとの結婚を機に愛西市へIターン移住。就農後、衝撃的だったのは「鮮度」ということの大切さ、素晴らしさだったそうだ。


愛知県愛西市の旧立田村地区にある田島蓮園は、古く明治時代より木曽三川が運んだ肥沃な土壌で蓮根の栽培が盛んなこの地区で、​農薬:栽培期間中不使用・化学肥料不使用・​田んぼ直送を掲げ、蓮根本来の美味しさを追求するため、土づくりにこだわる創業70年余年の蓮園農家です。
目指しているのは『真面目で愛される日本の蓮ブランド』を確立すること。

栽培の合間には、蓮根に関する四季折々のイベントの開催や、アジア新興国での農業指導活動など、広義での蓮根づくりにも夫婦で励んでいます。

ちなみに蓮根栽培の起源は、近江を旅したひとりの住職が、蓮の華の美しさに心を打たれ、その種をもらい受け、この地で栽培したことといわれています。
 
ロータスホワイトという品種

ロータスホワイトという品種

田島蓮園が主に栽培するのはロータスホワイト種。名前の由来はその清らかな白い花に依る。
収穫は花の咲いた後の 8 月中旬~翌年4月末頃まで。寒い時期に甘みがのるが、新ものの瑞々しさなど季節ごとの味の違いを食べ比べるのも楽しみのひとつ。

一般的に水圧ポンプで収穫できる作業効率のいい品種の栽培に移行するなか、味本位のロータスホワイトを頑なに守るのが田島蓮園の姿勢です。
無農薬・無化学肥料の栽培

無農薬・無化学肥料の栽培

良い土づくりは蓮根を強く元気にするので、生育期間の半年以上も前から施肥で糖質やミネラルのバランスの整った土壌を準備します。カカオハスク (従来廃棄されていたカカオ豆の外皮やその破 片)などのミネラル分が豊富で、善玉菌となる微生物の良質のエサにもなる資材、EM活性液を施すなどの努力をしています。
結果、無農薬・ 無化学肥料の栽培となるのです。
畑の泥が守ってくれる鮮度

畑の泥が守ってくれる鮮度

多くの食材同様に、鮮度の良さは美味しさを大きく左右します。田島蓮園の蓮根がファンの間で定評があるのは、一にも二にも鮮度の良さであることは声を大にして言えます。その理由は泥付きのままで出荷すること。

掘り立ての鮮度を田んぼの泥が守り、直接お客様に届けしています。
世界に1つだけ備中鍬

世界に1つだけ備中鍬

田島蓮園の蓮根は1本1本手掘りで収穫します。
手掘りの道具には備中鍬(びっちゅうぐわ)を使います。
4本爪が特徴で、掘る人の背丈に合わせてカスタマイズされたものを使用。掘る際には蓮根を傷つけないことに細心の注意を払うのですが、そこには熟練の技や勘が必要です。どこにどう埋まっているかは、ちいさな芽だけが唯一の目印。 中腰の姿勢での作業を強いられるため、かなりの重労働になりますが、オリジナル備中鍬で丁寧に収穫しています。

蓮にまつわるエトセトラ

象鼻杯(蓮酒)… 涼しげな香気のお酒を楽しむ習慣。その姿が象の鼻のようにみえることから「象鼻杯」と呼ばれるお酒の飲み方があります。葉と茎がつながる部分に孔をあけ、葉にお酒を注ぎながら茎を吸えば、口元にお酒が届きます。茎には大小の穴が開いているので、そこをお酒が通過します。
蓮根は地下茎が成長したものなので茎と蓮根の断面は同形なんですね。 「象鼻杯」には長い歴史があります。江戸後期編纂の古今要覧稿(自然・社会・人文の博物学の 引用解説書)にもその記述があります。「葉の正 中より茎に孔を明けて酒をつぎて其茎の元より 吸ふを楽なりとて…」。ルーツは中国のようで、 現在でも蘇州では「象鼻杯」で酒を飲むことがあるそうです。

フレッシュな蓮の実は初夏の蓮根畑の楽しみ。蓮の実とは、花びらが散ったあとに残るジョーロの口のような蓮台の外殻を剥くと出てくる緑色の粒(オリーブの実のよう)です。さらにその緑色の皮を剥くと白い粒があり、それがそのまま食べられるのです。
味わいはカシューナッツに近いかな?ちなみに白い実をさらに剥くと芯があり、それを乾燥させたものが蓮芯茶になります。 収穫期間が限られるため生のものは夏だけの風物詩。しかも産地だけでしか楽しめません。
ビタミンB1やカリウム・カルシウムなどのミネラル、食物繊維なども豊富。漢方では「連実(れんじつ)」と呼ばれ、滋養強壮や婦人病、下痢止めなどに効果があるとか。

蓮の華は、お盆のお供え用仏花として出荷されます。蓮はインド原産のハス科多年草です。花は 7 ~ 8 月で花色は白か桃色、紅や黄色いものもあります。 蓮の語源は、花のまん中の形が蜂の巣に似ているところから「ハチス」となり、それが「ハス」となりました。 花言葉の代表的なものは「清らかな心」。お供え用の花として相応しい花言葉です。仏教では泥の中に咲く汚れなき花という解釈から、仏の智慧や慈悲の象徴とさていました。
善行をつめば死後に行ける極楽浄土は蓮花の形をしているとインドでは伝えられます。田島蓮園でもお盆前は、関西方面向けの花の出荷で多忙な時期となります。
 
  • 蓮にまつわるエトセトラ
14歳で父が他界。 祖父から承継した蓮根農家という仕事   ~田島寛也~

14歳で父が他界。
祖父から承継した蓮根農家という仕事
~田島寛也~

「小さい頃から農業をやりたいと考えたことはなく、田んぼの畦にいる昆虫を追いかけて観察していることの方が楽しく、昆虫の研究者になりたいと思っていました(笑)」と語る代表の田島寛也さん。

大学卒業の際に就農か就職かの選択を迫られた際、14歳の時に亡くなった父が生前言っていた言葉「迷ったら人の選ばない方を選びなさい。その方が絶対に面白い人生になるから。」という言葉に導かれるように、自分しか選べない家業を継ぐという選択をしました。

「父が生きている頃も、つまり私が子どもの頃から両親よりも祖父母と過ごすことが多く、要するに私はおじいちゃん子、おばあちゃん子でした。というのも、両親はとにかく農作業などで忙しく一緒に居る時間は限られていたので、想い出も祖父母と一緒に行った近所の喫茶店や本屋や、そんなのが多いですね。祖父は一昨年肺がんになり、心筋梗塞も経験していますが、いまも健在でとにかく昔から何でもできちゃう人です。生け花や日曜大工や…印象深いのが就農してすぐ、私の未熟さゆえなんですが、トラクターを田んぼに入れ泥濘にはまり動けなくなったときも祖父が悠々とユンボで登場し、難なく引き上げてくれました。」。

父ではなく、おじいちゃんだったから家業を継承したのだろうなあと思っています。もし父が生きていたら、もし父が今も家業を継いでいたら、私は別の道を歩んでいたような気がします。
 
蓮根農家に気軽に遊びに来ませんか   〜田島沙紀~

蓮根農家に気軽に遊びに来ませんか
〜田島沙紀~

個人的な話ですが、寛也さんとの出会いは、就活時に大手の農機具メーカーさんの会社訪問とかで何度か顔を合わせたのがきっかけで自然にお友だちのような感じになりました。卒業後は、私は有機農産物などを扱う販売会社に勤め、寛也さんは愛西市で就農。少し連絡が途絶えました。

しばらくして私の仕事の関係もあり、寛也さんが流通事情などを知りたくて…ということで、よく連絡を取るようになり、東京で会うなどのお付き合いが始まり現在に至ります。

結婚するときも都会暮らしか?田舎か?営業の仕事か?生産者か?正直迷いはありましたが、蓮根という食材だけではなく蓮そのものに私が魅せられたことが、いまの人生になっています。
多くの方が私たちの畑まで遊びに来ていただき、蓮の奥深さを感じて貰えればとても幸せです。

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