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1300年の歴史を持つ伝統食 國松本店の濱納豆

1300年の歴史を持つ伝統食 國松本店の濱納豆
國松本店は創業以来140年以上もの間、濱納豆の技法、製法、味の伝統を受け継ぎ現在に至る老舗です。
この濱納豆など寺納豆のルーツは約1300年前仏教伝来と共に寺に伝わったもので、今も残る京都の大徳寺納豆を含め、現在では全国に約11箇所でしか作られていません。その中で三河國・吉田城(現在の愛知県豊橋市今橋町)近くにあった悟真寺で作られ、寺が年末年始の挨拶に檀家衆に配った事で地域に広まった濱納豆を伝承しているのが國松本店です。濱納豆は大豆を麹菌で発酵させ、約半年の醸造を経て天日干しさせ、粒タイプの豆味噌のように仕上げたものなのです。

愛知県は伝統的な発酵・醸造文化が県内各地に息づく、全国的にもめずらしい土地だと言われています。
たとえば岡崎市には八丁味噌、武豊町には溜まり醤油、碧南には味醂と白しょうゆ、半田市はお酢などがあり、現在も多様な調味料が盛んに醸されているのです。味噌は鎌倉・室町時代から現在のような形で作られてきましたが、濱納豆の歴史はもっと前の奈良時代から。当時は、位の高い貴族や僧侶、武将 などがそのまま食べる「薬」のような貴重品でした。その後時代の変化で陰を潜め、愛知県内でも知る人の少なくなった濱納豆ですが、いま発酵の力が見直され、再び注目が集まっています。日本の発酵食 品の起源とも言える濱納豆。ぜひ食卓に取り入れ、守り継いでいきましょう。

1300年の歴史を持つ伝統食

まずは濱納豆も含めたこの食材一般の名称である寺納豆(唐納豆とも呼ばれる)の来歴についてざっくりとご説明します。寺納豆は日本ではおおよそ1300年の歴史を持つ発酵食です。原型は奈良時代に大陸 ( 中国 ) より伝わり ( かの鑑眞和尚が 伝えたという説もあり )、奈良・平城京の各寺院の食事(僧侶が自ら仕込み自ら食べる)として受け継がれ、遷都後の平安京でも同様に寺院で食されました。時を経て室町時代、将軍家やその後次第に勢いを強めていく戦国武将にも重宝され、彼らは寺納豆の栄養価と保存性に注目し戦時の携帯食として利用しました。当時の寺院は戦陣として使われることも多く、そのことも寺納豆と武将たちの関係を密にしました。江戸時代を経て明治になると味噌、たまり、醤油などの醸造蔵が、趣味人のニーズに応えるため寺納豆に倣い商品化し、料亭などで一部の好事家の好む高級珍 味となり、寺院が檀家衆への進物として提供したことも手伝い、大正以降は庶民に親しまれる 食材として広がりました。

味噌・醤油同様に麹菌でつくられる発酵食で「納豆」というと、少なくない人たちが朝食の定番『糸引き納豆』を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし寺納豆はそれとは異なるもので、近い食材は寺納豆同様に麹菌で発酵熟成させる味噌やたまりです。さらに近いのがおそらくは同じ出自となるであろう「豆チ(とうち)」です。
「豆チ」は中華料理の黒豆炒めや麻婆豆腐などに使われる定番調味料ですが、両者の違いは「豆チ」が黒大豆原料なのに対し寺納豆は豆腐や味噌と同じく白大豆でつくられることです。基本の製法は大豆に麹と塩をまぶし(*濱納豆は塩水に浸ける)発酵させたもの。
「納豆」の由来は、元々はお寺の台所である「納所」でつくられたことに依るという。「納所」の「豆」ゆえ「納豆」となったとの説が有力らしい。この希有な食べものである寺納豆の価値を伝えるいくつかの逸話があります。数寄者としても名高い風流人、室町幕府八代将軍足利義政は日々全国から集まる珍味や高級食材をふだんから食し贅の限りを尽くしていたと想像される、いわゆる美食家だ。その義正の大の好物が湯漬けに「寺納豆」を添えたものでした。また三河出身の天下人、徳川家康も寺 納豆を戦時ばかりでなく日常でも愛食したとされ、健康オタク?の家康のこと、もしかしたら日々菌活に勤しんでいたのかも知れません。
濱納豆ってすごいんです!

濱納豆ってすごいんです!

●濃厚で複雑な旨みとコク
大豆を麹菌と塩で発酵・熟成させ、天日干しした大豆発酵食品。強い旨みとコクが詰まった自然派な旨味調味料です。味噌のルーツですが、味噌以上に 五味(酸味・甘味・苦味・塩味・旨味)を感じます。
●発酵の力が生きています
発酵が生きたままなので、常温に置いておくと熟成が進んで旨みが深くなり、香りはより芳潤に。また、赤身のお肉などにつけておくと、酵素がタンパク質を分解し柔らかくしてくれます。
●抗酸化性のある食品です
2017年、椙山女子学院の江崎教授による学術論文で、 國松本店の濱納豆は原料麹との比較において抗酸化物質が 6.6 倍であると示されました。健康や美容、生活習慣病が気になる方にも嬉しい食品です。

いまどきの「数寄者」たちは、あらたなマリアージュを模索する。

濱納豆は可能性に満ちた食材です。じつは、濱納豆は高度成長期に他の伝統調味料や伝統発酵食品と同じく、外来の調味料や食材に、本来あるべき地位を奪われた経緯があります。高度成長期といえば地元の八百屋、魚屋、肉屋、乾物屋などにとって代わり食料品や日用品を販売するスーパーマーケットが登場、急成長を遂げた時期です。
ただ、本来の食の豊かさが見直されるいま、國松本店の熱意と工夫に満ちたイベント企画やレシピ提案に、高感度な消費者の方々や飲食店さんが呼応しはじめています。
それは単に和食用食材という狭いカテゴリーを超え、和洋中華、さらにはスイーツの分野までもカバーする味の冒険世界であり、食べる愉しみの謳歌でもあります。 濱納豆との出会いから、いまどきの「数寄者」たちは、あたらしいマリアージュを模索し、それを愉しんでいるのです。
ある人は「濱納豆は畑のチーズだ」と言いました。また「大地のアンチョビだ!」と感嘆する人もいた。「黒い宝石」という表現もおもしろい言葉です。「これほどの旨みは、ほんとに大豆由来なのか?」の問いかけもありました。数多の旨味の引き出しを持つ濱納豆。食文化の新たな出会いで濱納豆がどんな道を歩むのか。とてもワクワクしています。
  • 濱納豆ってすごいんです!
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